父との最後の旅と、形見として選んだカメラの話

こんにちは、あきらん(@akilans)です。

2024年も終わりが近づいてきました。皆様、風邪など引かずお元気でしょうか。
年の瀬ということもあり、今年中にこの話を書いておかなければと思い、筆をとりました。

私は2024年5月、ゴールデンウィーク中にLeicaのカメラ「M11-P」と「ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.」を購入しました。

購入当時も、なぜM11-Pを選んだのかはお話ししていました。

しかし、なぜこのタイミングで購入したのか、その裏側についてはまだ触れていませんでした。今回はその経緯も含め、お話しさせていただきます。

父からの電話

「いつかはライカ」とは思っていましたが、とにかく高い。たかがカメラにこの金額?馬鹿じゃないの?と自分でも思っていました。

そんな2023年の残暑が厳しい時期、父から一本の電話がありました。

「みんなで旅行に行きたい。誕生日を祝ってほしい。」と。

驚きました。家族揃っての旅行なんて10年以上していなかったからです。
しかも「来月行きたい」と。

「来年じゃだめなの?」と聞くと、父は「来年じゃ遅いな」と言いました。

父は昭和気質な人で、一度決めたら絶対に曲げない性格です。

そこから兄たちに話を通し、日程を決め、ホテルを取り、段取りはすべて私が行いました。

なぜ私にだけ連絡してきたのかは、今でもわかりません。

淡路島の旅

父が希望した行き先は「淡路島」。

私たちは新幹線で新神戸まで行き、そこからレンタカーで現地集合しました。

子供たちは公園で遊び、大人たちはゆったりと時間を過ごしました。

父は病と闘っており、前回会った時よりも体力が落ちていました。公園を歩くことも難しく、基本的には車椅子での移動でした。

この頃、私は「50展」の直前だったこともあり、「SIGMA fp L」に「ズミクロン 50mm 2nd」を装着して、家族写真を撮影しました。

しばらく遊んだ後、予約していたホテルに到着すると、父が突然「記念写真を撮ってほしい」と言いました。

父がそんなことを言うのは初めてで、驚いたことを今でも覚えています。

ですが、用意周到な私。三脚を持参していたので、すぐに撮影することができました。

食事の際には、広い座敷の個室をホテルが用意してくれて、子供たちから父へ小さな花束を贈りました。
その時、父はとても嬉しそうな表情を見せてくれました

その笑顔を写真に収めたことは、私にとって忘れられない思い出になりました。

翌日、無事に旅程を終え、私たちの家族旅行は幕を閉じました。

余談ですが、立ち寄った観光地で、掃除のおじさんから、「いいレンズつけてますね」って絡まれたのも、今となっては良い思い出です。

アルバム

淡路島で撮影した写真は559枚。その中から厳選し、思い出に残る写真をいつものPhotobackさんでフォトアルバムにしました。

後日、そのアルバムを父に見せると、電話越しに「こんな立派なものを作ってくれて、ありがとう」と伝えてくれました。

しかし、その1ヶ月後、父は他界しました
あっという間の出来事でした。

「来年じゃ遅いな」という父の言葉は、今でも頭から離れません。きっと父は、その時、すでに分かっていたのだと思います。

まさか淡路島で撮った笑顔の写真が、遺影に使われることになるとは、思いもしませんでした。

残してくれたもの

父が残してくれたものの中には、日常的に使えるものはほとんどありませんでした。
ただ、現金が少し残されていました。

当初、そのお金は「子供の将来のために」と貯蓄しようと考えていました。

しかし時間が経つにつれ、考えが変わってきました。

父が亡くなってからも、時々、作った淡路島のアルバムを見返すたびに「もしあの時、このカメラを使っていたら…」という後悔の念が芽生えました。

別にその時使っていた機材を否定するつもりはありません。ただ、それでも、その思いは次第に強くなっていきました。

悔いることなく、残された家族を撮っていきたいと。

「形見」としてのライカ

父の最後を撮ったレンズが「ズミクロン 50mm 2nd」だったことも後押しし、「今しかない」と感じました。

妻に相談すると、
「今しか買えないだろうから、いいんじゃない?」
と快く背中を押してくれました。

その後、何を買うか悩みに悩み、最終的に選んだのが「M11-P」と「ズミルックスM f1.4/35mm ASPH.」でした。

この選択に後悔は一切ありません。

「形見」として使うにふさわしいカメラとレンズ。

今でもこの選択に後悔は全くないですし、これからもこのセットで撮り続けたいと思っています。
私が他のレンズやカメラを手放し、新たに増やさないのも、この思いが強いからなのかもしれません。

勝手な解釈ですが、ライカは、そういうカメラだと思うんです。
撮っている時、不思議と、父のことを思い出します。

もちろん、今後、何かの際に手放すことがあるかもしれません。その時にはこれを良き思い出として、次に引き継いでいこうと考えています。

来週、父の一周忌があります。その日ももちろん、このカメラとレンズを持っていくつもりです。

ちなみに、今回、この記事を書くにあたり、刺激された記事がありましたのでご紹介しておきます。


ありがとうございました。